2022.05.09 13:44きみはベツレヘムの星じゃない|ジュンひよ ごとりと寮の部屋の隅に置かれたそれは、ちいさなクリスマスツリーだった。「ジュンくん、なぁにこれ」「や、……親から送られてきて」 言葉を濁すジュンは、すこし戸惑っているようだった。聞けば特に連絡もなく突然段ボールが送られてきたらしい。意図を聞くのもめんどうくさいし今はSSで忙しいですし……て早口でまくしたてるさまは明らかに言い訳じみている...
2022.05.09 13:42透明にさせないで|ジュンひよ 参ったな。 迷子になっちゃった。 森の中、次の新曲のMV撮影に来ている休憩時間だった。待機時間にじっとしておられず絶対に勝手にどっか行かないでくださいよと口を酸っぱくして言い続けた相方の言葉を無視して散歩にきた。ついでに、電波の届いているところで凪砂の様子を毒蛇に確認する。さらについでに、日和がいないあいだジュンはスタッフとの交流を図る...
2022.05.09 13:40こいびとみまん×→?|ジュンひよ 田舎でのロケの途中、休憩時間になると気がついたら日和がいなくなっていた。 油断するといつもこうだった。ジュンはスタッフに時間までに戻ると告げ、スマホを電話をかけながら走り回る。土地勘もなく、電波も強くないこの状況でどう探すんだよと途方に暮れた。これがESの近くだったら日和の行きそうなところに心当たりがあったのにと思う。 田んぼだらけの道...
2022.05.09 13:19眠り姫にはなれない|ジュンひよ 天気予報が一日中雨だと告げているのと同時に、外からぽつぽつと雨音が聴こえてきた。急いで洗濯物をしまい込んで窓を閉めると、日和はリビングのソファに膝を折って座っていた。眉を寄せて頬を膨らませている。 今日は晴れたらメアリを連れて散歩に行こうと話していたので、わかりやすく機嫌が悪くなっているのだろう。 キッチンに向かい、お湯を沸かしてティー...
2022.03.28 12:50やさしい部屋|ジュンひよ 救済ってものは、もっと浪漫があって大々的に訪れるものだと思っていた。 ジュンに訪れたどん底から這い上がるチャンス、すなわち救済は、ふかふかのソファに座り、呑気に紅茶を嗜んだあと。まるでダンスの誘いのように凛々しく告げられた。「きみ、いい声をしているから、あしたからぼくとユニットを組むね!」 ……正直わけがわからなかった。ただ、それがチャ...
2022.03.28 12:46天気雨|ジュンひよ 参ったな。 迷子になっちゃった。 森の中、次の新曲のMV撮影に来ている休憩時間だった。待機時間にじっとしておられず絶対に勝手にどっか行かないでくださいよと口を酸っぱくして言い続けた相方の言葉を無視して散歩にきた。ついでに、電波の届いているところで凪砂の様子を毒蛇に確認する。さらについでに、日和がいないあいだジュンはスタッフとの交流を図る...
2022.03.28 00:04祝福|ジュンひよ ピピピ、と体温計が鳴る。出ている数字にはあ、と自然にため息が出る。今日は日曜日で学校は休みだったがレッスンが入っている。始まるのは一時間後なので、すぐにメアリの散歩から戻ってくるであろうリーダーに報告しなければならない。 でもその前に喉が渇いた。何か飲みたい。レッスン中によく持っていくスポーツドリンクがある。それは共同の冷蔵庫に入ってい...
2022.03.27 16:26初めから勝負はついていた|ジュンひよ セックスした次の日、おひいさんは昨日と同じ香水をつけてくる。「忘れたかったら、忘れてくださいね。オレもそうしますんで」 最初におひいさんを抱いた日に、なかったことにしたければと最後通告で、オレとしては最大限に配慮したつもりの発言は、逆におひいさんの反感を買ってしまったらしい。 新しいものが好きで古いものが嫌いなおひいはんは毎日のように香...
2021.10.05 09:19断絶|ジュンひよ 失敗した、どうしよう、と思った。 晴れて玲明学園高等部に入学できた僕は、必ず入らなければならない部活として華道部を検討していた。 というのもわかりやすく中学で華道部で、ただたまにメンバーで集まってお菓子とお茶を嗜むお気楽な部活だったからだ。 玲明学園はアイドル養成所でもある。当然部活よりも芸能活動が優先される。だからといって部活を何もや...
2021.10.05 09:16一石∞鳥!|ジュンひよ ジュンくんってもしかして天然タラシなのではないだろうか疑惑が浮上したのは、ESが設立されて少ししてジュンくんが学園の寮から引っ越してきて割とすぐのことだった。 サマーライブから仲良くしていた真くんとは引き続き良好な関係を維持しているようだったし、後輩となるこはくくんにもサクラちゃうわーと突っ込みを入れられるものの嫌ではなさそう。Valk...
2021.07.24 11:54蕾のままで|ジュンひよ 雑誌に花をテーマに撮影することになったジュンと日和は、花屋で下見をしていた。いくつか撮りたい花があれば候補をあげてくれとスタッフより依頼があったのだ。日和が華道部であったことを知ったスタッフが、それならば、と用意してくれた企画らしい。 花に精通している日和はともかくジュンは話を聞いた時「はな?」と眉を顰めていた。『ジュンくんは何を選ぶの...
2021.05.30 14:15メリーゴーランドとキス|ジュンひよ そんなことで緊張が和らぐわけがないと判っていたのに。 Eveの二回目の単独ライブ直前の楽屋である。一回目で及第点と評してもらったものの日和との力量差と実感したジュンは焦っていた。この人に追いつくのにいったい何年かかるのだろう。Edenで一緒になる年上の凪砂も圧倒的なパフォーマンス力を持っていたし、同学年の茨は出会う前から噂が流れていたぐ...