ひとみを燃やして|やまえじ
兄を倒すのだと、ぎらぎらとした燃えるような太陽のいろが、印象的だった。
出会って間もないころ、グループ内での挨拶で、話せる範囲で、ここにきた経緯を伝えあった。まだ慣れていないシオンは到底話せるような状態ではなかったから瑛一が代弁していた。
「兄さんと父さんに誘われて……。でも歌うことは好きだから、やるなら全力で挑みたい……です」
なんだか自分がいちばん情けないような気がしてくる。ヴァンも綺羅もナギも瑛一も、ここに自分の意思で立っていた。……そう、あの大和も。
あんな風に強く、誰かに対して、感情を燃やせる人を純粋に尊敬してしまう。本気で怒った記憶なんてほぼほぼない瑛二には、ちょっとした言動ですぐにひとみに炎を灯す大和がとにかく不思議な存在で、だから、気がついたら目で追ってしまう。最近ダンスの練習をしている時は、それに気づかれたのかよく目が合った。
おまえおれをよく見てるけど。おれのダンス変なとこあんのか、と声をかけられたのは、次のダンスレッスンの時だった。
「……やまと」
素朴の皮を被ったとんでもない化け物だな、と瑛二に対して思うことがある。出会って、目があって、それから数年が経ち。みんなに秘密でキスをするような関係になったのは最近のことだ。
瑛二はたいそうキスが好きなようで、なにかと理由をつけては大和の部屋に来て誘ってくる。体に何か負担があるわけでもなく減るものでもないからと大和は一度も拒絶したことはない。する理由もなかった。
「ねえ」
ぎしっとベッドが揺れる。大和の上に座る瑛二は、割れた筋肉を布越しに、楽しそうに撫でている。
数年前はどこか浮いているようなふわっとした視線をよくしていた。兄のことが大好きで、誰にだって礼儀正しく、肯定できる、そんな慈しみを持った瑛二のひとみが、大和には不思議にに映った。
こいつは、おれみたいに熱くはなれないんだろうなあ、とぼんやり思っていたりもしたのだけれど。
瑛二が覆いかぶさってくる。押し倒されているこの体勢でこのまま顔を近づければすることなんて一つしかない。みるみるうちに近づく瑛二の顔とそっと閉じていく瞼の隙間、その眼球の奥に、ちりちりと燃えるものを確かに大和は見た。
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