同じなんだ|りつまお
「お前ちょっと無理してるだろ」
あそこの公園で休もうか、と下校途中で突然立ち止まった幼なじみに、どうせもうすぐで着くじゃんと首を振る。あんまり言いたくなかったけどしょうがない、とでも言いたげなひと息のあと、疲れを指摘され、凛月は何も言えなくなった。もう日も暮れかけていて、むしろ活力が出てくる時間帯なはずなのに、実は先ほどから数回めまいがしている。
残暑と言えど毎日毎日レッスンをしていれば疲労は蓄積する。特に今年の夏は去年よりずっと昼間に動いていたので比ではなかった。
けれどここで疲れを肯定してしまえば休むことになって、また昼との時間が離れてしまうかも知れないと少しばかり怖かった。だから。
「別に、ちょっと寝不足なだけ」
と、嘘を吐いた。
「うん。お前、それ嘘だろ? 解るから」
すぐに見抜かれた。
「なんで」
「それ俺がトリックスターのみんなによく使う言い訳。俺もそうだから、解る」
……やられた。いつも通り冷静に思考を巡らせれば辿り着けた答えだ。自分の不調を自覚させられて、凛月はますます何も言えなくなる。
「無理は、ほんとの無理にならない程度にな。ただ顔色がかなりヤバそうだったから、な?」
「……はいはい。ま〜くんに言葉で負けちゃうほどだから、仕方ないね」
「お前はなんかどっか上からだよな〜。ほら、行こ」
少し汗ばんだ手を繋がれる。真緒の手はとても熱いけれど、きっと自分が冷たいからよけいそう感じるのだろう。今はこの温度差が心地良いと思った。じんわりと浸透していく、他人の体温が。
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