融解|ジュンひよ


 同学年の少年よりはいくらか逞しいその肩を引き寄せて密着する。強張ったからだに言葉はなくとも緊張が伝わった。
 昨日は日和が茨の作戦で打ち負かした相手にさんざん恨み辛みをこえた暴言を吐かれた。部屋に戻ってそこら中にあるものを投げながらわんわん泣き喚き、最終的に泣き疲れて寝てしまったが、次の朝は、タイミングよくオフの日曜日だった。ゆっくりと上体を起こす。
 寝息が聞こえないので起きているのは間違いないだろうと二段ベッドの上にいるジュンに声をかけ半ば強制的に降りてこさせた。機嫌の悪そうなかおは、ただでさえ人相が悪いと思われがちなのにそれを増長しかねないクマがはっきりとできていた。
 悪夢でも見たのか、そもそも不眠か、日和の知り得ない理由か。無神経なような気もして、問い質すのは辞めた。
 泣いてすっきりできるぶん、まだ自分はいいのかもしれない。自分から無感動な人間だと自称する彼はその通りぐちぐた嫌味を言っても喜怒哀楽は激しくないほうだ。だいたい日和が泣いて宥められて、その次の日はジュンがこうなっている。いつもは学校や仕事の準備で忙しくゆっくり話したり観察する時間がなかったのが、いい機会かも知れないとベッドに乗り出してきたジュンの肩を引き寄せた。
「ハグは初めて?」
「さすがに初めてではないですねぇ〜。けど」
「けど?」
「あんたほど頻繁にはしませんよ。なのでまぁ……久しぶりでは、ある」
 この学園で嫌われ者となった自分たちに自らハグしにくる生徒なんていないだろうし、ジュンは両親と連絡を絶っている。相当な間があるのだろうと思われた。
 顔が見たくてすっと離れるとあ、と声が漏れた。それがなんだか置いていかれた子どもみたいな色を持っていたのでかわいいなぁと思いながら、目の下のクマをそっと指で拭うように軽くなぞ
「ぼくはきみを甘やかしたい」
 蜂蜜色をした瞳がとろりと揺れる。再度引き寄せたからだはさきほどよりもちからが抜けていて、素直だった。

walatte

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