Something Blue|ジュンひよ

 サムシング・フォー。
 花嫁が幸せになるための四つのアイテム。
 六月、雑誌のブライダル特集でEdenでの撮影が決まり、下準備を進めていた。知名度も高いその雑誌からは仕事の告知から実際にの撮影日までだいぶ時間がある。Adamは花婿として、女性的な印象を求められがちはEveは花嫁として──実際にウェディングドレスを着るわけではないが花嫁の気持ちで──撮影に臨んでほしいと、花婿衣装の打ち合わせでは頼まれた。
 花嫁ってそもそも花婿ですらなかったことないしすぐになる予定もないのだから途方もない、と漠然とした依頼に四苦八苦していたジュンをよそに、実家に帰り母親に仕事の話をした日和は、事務所の会議室でこれを準備したいんだよね、とスマートフォンの画面を突きつけてきた。
 サムシング・フォー。
 花嫁が四つのものを身につけるの幸せになれるという欧米にある慣習だ。
「撮影までふたりそれぞれ集めるのは時間がなさそうだから、ぼくが代表してチャレンジしてみるねっ。まずは、」
「『何かひとつ古いもの』、っすね」
「それはもう借りてきたんだよね! 母上の花嫁衣装にあるヴェールだね。うちは兄弟しかいなくてあげる対象がいないから、好きにアレンジして使っていいって許可も得たし、ジュンくんの分も使ってもらおうね!」
「花婿がヴェールって違和感ありません? 似合いますかねぇ、オレ」
「今は多様性の時代だね。それに、きっとかわいい〜!ってジュンくんのファンは喜ぶね」
「……そうっすかねぇ。んじゃ次は……『何か新しいもの』っすけど、これは用意してもらう花婿衣装でいいんじゃないですかねぇ?」
 ジュンの提案にうんうん、と機嫌よさそうに日和は頷く。どうやら日和も同じ考えだったようだ。
「『何かひとつ借りたもの』もはね、本来は結婚している隣人や友人から借りるらしいのだけれど、ぼくたちの年齢はようやっと結婚ができるようになったばかりで周りになかなかいないし、それになによりEdenとしての仕事もかねてるから、凪砂くんから借りようと思ってね。アクセサリーやハンカチ、何か貸してほしいな〜ってお願いしておいたね」
「ナギ先輩、発掘したオレらにはよくわかんない石渡してきそう」
「それならそれで、大事に借りるね! そして最後は」
「『何かひとつ青いもの』……聖母マリアのシンボルカラーである青は純潔を表す……青は幸せを呼ぶ色だから……か。これはどうするんすか? 目立たない場所につけろって書いてありますけど。花嫁だとガーターに青いリボンつけるってありますけど、オレらの花婿衣装じゃ無理ですよぉ〜?」
「それはね、いつも身に纏っているから大丈夫だね」
「あぁ?」
「まっさらな青とは言えない、少し暗くて未成熟な青だけど……だから、大丈夫!」
「ええ? あんた青のアクセなんてつけましたっけ……まぁ、あんたがそう言うならいいですけどねぇ〜?」
 すっと日和が双眸を緩める。すみれ色の瞳はこの梅雨の季節により映えて見える気がする。よく見る雨の花と同じ色。
「ふふ。ジュンくんは、本当にかわいいね」
「あんたまたそれ、褒めてない方でしょうが」

walatte

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