2020.04.28 08:32見逃してあげる|りつまお 寮住まいになった真緒は、ますます帰るタイミングを失いがちになってしまい、日付が変わるまで生徒会室にいることもしばしばだった。英智から業務量が変わったのではなくて、単純に自分の要領が悪い、まだ慣れていないのもあるのだが。 実際、先代にあたる英智は持病があったので主に業務をこなしていたのは敬人だった。つまり表立った仕事は英智が行い、裏であま...
2020.04.26 02:03まごころを、きみに|ジュンひよ「──オレと勝負してください、おひいさん」 とっておきの贈り物を、あなたに。「……ああもう、どうしてこんなに皆さん思い通りに動いてくださらないのか!」 事務所にある副所長の自室にて、派手にタイピング音を響かせながら茨は声を荒げる。ソファに座って分厚いミステリー小説を読んでいた凪砂は、くすりと微笑みながら本を閉じた。「……茨、でも楽しそう」...
2020.04.26 02:02雨がくれた(きみの)景色|ジュンひよ 田舎での撮影のあと、帰りに雨に降られてしまった。まだ出会って間もない日和と屋根のあるベンチで座っているが、雨はいっこうに止む気配を見せない。バスはちょうど一本見逃してしまい次は一時間も先だった。 春雨は落ちるというよりは降りてくるような印象を持ってしまうぐらいに粒が小さく、そのせいかほとんど雨音もなく静かだ。 茨は車を手配すると言ってい...