2020.02.24 16:02ちいさな独占欲|ジュンひよ 一心同体だと、ずっと呪文みたいに唱え続けたきたせいだ、と思う。数日会えないだけで、こんなにも違和感があるのは。 高校を卒業した日和は、大学でスケジュールの都合がつきやすくなり長期のロケにもしばしば行くようになった。 二枚看板である片割れの凪砂とも最近は一緒の仕事がよく入る。ふたりに比べればジュンはまだまだ実力も知名度も低いので、仕事量で...
2020.02.22 14:54後悔|いちくう 思い返せば、小さなからだに甘やかされていたのはいつだって一郎のほうだった。 相棒と呼ばれ始めたのも、なんとなく、いつも兄と呼ばれ兄として生きている自分を、ほんの一瞬だけそうじゃない存在にしてくれる時間を、呼び名と共に与えてくれていたのだろう。空却といる時だけ、大事な弟たちの兄であるという冠をとって、ただの一郎としての時間を過ごせていた。...
2020.02.22 14:53越境のない隣人|ジュンひよ 日和がジュンにフレンチのテーブルマナーを徹底して教えると宣言したのは三日前、日和と茨で行く予定だった食事会に茨が会社の仕事で行けなくなり、たまたまスケジュールが空いていたジュンが代理で参加した帰りのことだった。フレンチのコースで当然テーブルマナーを知らないジュンは最初から最後までぎこちないようすだったが、もとから育ちを知られているジュン...
2020.02.10 15:06『もし、』|十空 人と神さま、大人と子ども。ありとあらゆる境界に立つ、中庸のひと。しばらく経って空却に抱いたイメージは、出会いのそれよりもだいぶ変わったように思う。 最初はカッコいいと純粋に憧れていたのが、少し危うい一面も見えてきて、そして今は、彼の多面性が恐ろしくもある。その分空却を知れているということでもあるから、十四にとっては嬉しくもあるのだが。 ...
2020.02.10 15:04涙|十空 三ヶ日が過ぎてからようやく落ち着いた空却に十四は呼び出された。寺の仕事で年末年始は多忙だとだいぶ前から聞いていたし、十四も今年は同じ時期にライブが決まっており、年越しもバンドメンバーと共に過ごして一日ですらライブをしていた。その日のライブで行っていたツアーも千秋楽を迎え、二日はメンバーと初詣に行き打ち上げを行い、帰ってからは泥のように眠...
2020.02.10 03:38「チョコレート」「甘い」|十空 修行で空却の家に来る時に、十四はよく差し入れを持ってきた。ファンの子からプレゼントされたりおすすめされたりで流行りのスイーツに詳しいらしく、父親もあまり口にしない洋菓子を喜んで受け取っていた。 僧侶見習いとは言えど、それほど食生活に厳しいご時世でもない。空却もたまに商店街で買い食いしたり、顔見知りのお店からはもらったりしていて、食べたこ...
2020.02.01 15:11ビターチョコレートみたいな速さで|黄黒(WEB再録) 幼い頃の刷り込みは、どんなものより厄介だ。 5月の連休も終わって、ブレザーが暑苦しくなってきた。部活が終わってチームメイトと別れた黒子はブレザーを片手に持って、そのまま家へと向かう。火神の家も学校から近いのだが、生憎反対方向だ。黒子はいつもこの通り道をひとりで帰る。 もうすっかりこの生活にも慣れてしまったな、とたまに買い物に来る大型スー...